2025年8月29日に公開された、人気ゲーム「8番出口」の実写版。
2025年5月19日、第78回カンヌ国際映画祭のミッドナイト・スクリーニングで上映され、ポスターデザインのコンペティション「Prix Luciole」で最優秀賞を受賞しました!
私はゲームをやったことがなく、かまいたちのYouTubeで見た程度だったのですが(笑)、かなり楽しめました。
津波のシーンがあるので、人によっては注意が必要です。
「8番出口」の作品情報
- 公開日:2025年8月29日
- ジャンル:ホラー
- 監督:川村元気
- 脚本:平瀬謙太朗、川村元気
- キャスト:二宮和也、河内大和、小松菜奈、花瀬琴音、浅沼成・・
- 公式サイト:映画『8番出口』
「8番出口」あらすじ
蛍光灯が灯る無機質な白い地下通路を、ひとりの男が静かに歩いていく。いつまで経っても出口にたどり着くことができず、何度もすれ違うスーツ姿の男に違和感を覚え、自分が同じ通路を繰り返し歩いていることに気づく。そして男は、壁に掲示された奇妙な「ご案内」を見つける。「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から、外に出ること」。男は突如として迷い込んだ無限回廊から抜け出すべく、8番出口を求めて異変を探すが……。
「8番出口」のネタバレあらすじ
※注意:ネタバレ有
「8番出口」は、2023年にインディーゲーム開発者・KOTAKE CREATEさんがリリースした、「無限に続く地下通路で起きる異変を見抜き、出口を目指す」という、シンプルなのに緊張感たっぷりのゲームです。
映画版はそのゲームの設定に加え、しっかりと「物語」があります。
「迷う男」「歩く男」「少年」の三人の視点で描かれていきます。
満員電車に揺られながら、SNSをチェックする男。
紛争や感染症などのニュースをスワイプしていきます。
赤ちゃんの泣き声に苛立ち、怒鳴り散らすサラリーマンを、周りのみんなと同じように無視し、イヤホンを付け直し、「ボレロ」を聞きます。
そこで、男は元彼女からの電話を受けます。「赤ちゃんができた。どうする?」
突然の出来事に戸惑い、答えることができない男。
気づけば、無限に続く地下通路に迷い込んでしまいます。
脱出できる条件は、
- 異変を見逃さないこと
- 異変を見つけたら、すぐに引き返すこと
- 異変が見つからなかったら、引き返さないこと
- 8番出口から外に出ること
もし一度でも間違えれば、再び「0番出口」からやり直し。
男は、喘息発作を起こしながらも、脱出を試みます。
地下通路で起きる異変は、ゲームファンがニヤリとできるものから、映画オリジナルの演出まで!
- 赤ちゃんの泣き声がロッカーから響く(満員電車の中で泣いていた赤ちゃんの影響と思われる)
- 照明が落ち、暗闇に毛がなく人間の目や口がついたネズミが落ちてくる(満員電車の中で見ていたSNSのニュースに流れてくるネズミの画像の影響と思われる)
- 津波が通路の奥から押し寄せてくる(小説版「8番出口」によると、「迷う男」は被災して故郷が津波に流されている)
ジャンプスケアと不気味な音響効果で恐怖を倍増させてくれます!
「迷う男」
元彼女から「妊娠した」と告げられ、戸惑う主人公・「迷う男」。もちろん自分の子供なので無視するわけにはいきませんが、すぐには答えを出せず、葛藤します。
「迷う男」は喘息持ちで、何度も吸入器を使いながら地下通路を進みます。
二宮和也さんの喘息の演技がとてもリアルで、見ているこちらまで息苦しくなるほど。
その息苦しさが、地下通路の閉塞感と重なって、強い緊張感を生んでいました。
ただ不思議なのは、あれだけ苦しそうにしていたのに、物語が進むにつれて症状がほとんど出なくなっていくこと。(吸入が効いた?)
小説版「8番出口」によると、「迷う男」はコロナの後遺症で喘息持ちになってしまったそうです。
無限に続く地下通路で、「迷う男」は「少年」と出会います。迷いながら「少年」と会話を重ねるうちに、彼は少しずつ「家庭を持つ覚悟」を固めていきます。
そして最後には通路を抜け出し、彼女の元へ向かうために再び満員電車へ。
序盤で見て見ぬふりをした、赤ちゃんの泣き声に怒鳴るサラリーマンに、今度は立ち向かおうとするのです。
一見するとハッピーエンド。しかし個人的には「夢落ちなのでは…?」という疑念も残りました。
なぜなら、間違った出口から出てしまい、永久に通路に囚われてしまった「歩く男」を見ると、最後に津波に飲み込まれてしまった「迷う男」はゲームオーバーになったのではないでしょうか?
また、ルールである「8番出口から外に出ること」をまだクリアしていません。
だとすれば、地上に戻り、彼女や赤ちゃんに向き合う未来は、現実ではなく、彼の願望だったのかもしれませんね。
「歩く男」
ゲームにはなかった設定で、「歩く男」も脱出を試みているひとりです。
しかし、この「歩く男」はとにかくすぐに動揺し、怒りをぶつけます。
謎の女子高生が「ここにずっといるのも悪くない」と囁いた時、一瞬それを受け入れようとしたのです。
その反応から、「もしかして「歩く男」は女子高生と何かあったのでは?」と想像してしまいます。
小説版「8番出口」によると、「歩く男」は離婚しており、この日は息子に会える日でした。
また、酒におぼれ、息子に乱暴に当たっていたそうです。
なので「少年」に自分の息子の姿を重ね合わせ、ぎこちない笑顔で接していたのです。
そして、「歩く男」は8番出口に辿り着きます。
しかしそれはトラップで、「少年」は引き留めようとしますが、「歩く男」は「少年」を無視して、8番出口の階段を駆け上がってしまいます。
その後の「歩く男」の行方は不明ですが、永久に通路に囚われてしまったと考えられます。
「少年」
地下通路で「迷う男」や「歩く男」と出会う「少年」。
お母さんに探してほしくて、わざとはぐれてしまったことで、8番出口の通路に迷い込みます。
しかし、ルールや仕組みをきちんと理解しており、「迷う男」や「歩く男」にヒントを与え、脱出へと導こうとします。
「迷う男」はこの「少年」と話すうちに、少しずつ家庭を持つ覚悟を固めていきます。
回想シーンでは、この「少年」が「迷う男」の未来の息子では?という描き方もされていますが、その存在は謎のままです。
まとめ
「8番出口」のストーリー自体は、「大きな選択を迫られて、どうしても一歩が踏み出せない男が決断する」というだけのものです。
しかし、日常の延長線上にある「選択の怖さ」を強調していて、ゾクッとしました。
- 出口を間違えれば、永遠に同じ場所をさまよう。
- 誘惑に負ければ、もう二度と現実には戻れない。
- そして正しい選択をしたとしても、本当にそこに救いがあるとは限らない。
繰り返す毎日の中で、私たちが「異変」に気づいて行動できるのか、それとも見て見ぬふりを続けるのか・・そんな問いかけが込められているように感じました。